後遺障害

後遺障害が認められる痛みとは?

1 自賠責保険で後遺障害が認められる痛みの種類

自賠責保険で後遺障害が認められる痛みの種類は、 常時継続痛です。
継続痛ですから、打撲による痛みのように、将来、自然経過によって消退すると認められる痛みは除かれます。生涯にわたって継続することが予想される痛み(例えば、整復不能に終わった半月板損傷による疼痛)だけが後遺障害認定の対象となります。

 

また、常時痛ですから、運動した時にだけ痛みを感じる運動時痛や、気候の悪い 時にしか感じない程度のものは、後遺障害の認定から除かれます。但し、常時痛みを感じているが気候の悪い時には更に痛みが憎悪するという場合は後遺障害の 対象となります。常時痛であることに変わりがないからです。

 

2 痛みの等級判断基準

判断基準

このように絞られた後遺障害の対象となる痛みは、自賠責保険によって、RSDやカウザルキーといった特別な障害のケースを除き、12級、14級、非該当の3段階に等級付けされます。

 

では、自賠責保険は何を基準に3段階に分けているのでしょうか。痛みの程度でしょうか?
違います。その人がどれ程痛いのかについては、想像は出来ても正確には誰にも判りません。そこで他覚所見の有無によって分類せざるを得なくなります。

 

具体的には、以下のとおりです。

 

その神経症状が

 

  • 医学的に『証明』できるときは、 12級
  • 医学的に『説明』できるときは、 14級
  • 医学的に『説明』できないときは、 非該当

 

このように『証明』と『説明』で、12級と14級に分けられますので、『証明』と『説明』とはどう違うのか、その意味の違いが問題になります。

 

『証明』と『説明』の違い

例えば、首の痛みの原因が、頸椎圧迫骨折に病因がある場合と、頸椎の退行変性(骨が刺々しくなっている骨棘変性、頸椎間が狭くなっている頸椎間の狭小変性)に病因がある場合とに分けて説明します。

 

頸椎が圧迫骨折しているときも、骨棘変性や頸椎間に狭小変性があるときも首に痛みが生じます。そうすると、いずれも首の痛みが医学的に『証明』出来るとして12級が認定されそうです。

 

しかし、結論は、頸椎圧迫骨折では12級が認定され、頸椎の骨棘変性や頸椎間の狭小変性の場合は14級が認定され得るに止まります

 

ポイントは、交通事故との直接的な因果関係の有無にあります。

 

すなわち、頸椎圧迫骨折は、交通事故で直接生じる交通外傷ですが、頸椎の骨棘変性や頸椎間の狭小変性は、交通事故によって生じたのではありません。老化現象によって事故前から既に生じていたものです。事故前には顕現していなかった痛みが、交通事故による衝撃をきっかけとして痛みが顕現したに過ぎません。骨棘変性や頸椎間の狭小変性といった老化現象がなかったときは、今ほどの頑固な痛みが発生しないと考えられるわけです。そうしますと、現在の痛みの原因がすべて交通事故だけにあるとは言えないわけです。
このように

 

  1. 頸椎圧迫骨折のケースでは、
    交通事故によって頸椎圧迫骨折となり首に痛みが生じたと医学的に証明出来ますが、
  2. 骨棘変性や頸椎間に狭小変性のケースでは、
    交通事故によって骨棘変性や頸椎間の狭小変性となり、首に痛みが生じたと医学的に証明することが出来ません。
    ただ、画像上、骨棘変性や狭小変性が認められることから、その痛みは、それまで無症状だったものが、本件交通事故を契機として発症したと医学的に『説明』することは出来ます。
    従って、14級が認定されることがあり得るわけです。

 

他覚所見がない場合

以上に対して、老化現象である退行変性すらない、何らの他覚所見もない、ただ本人が痛いと言っているだけのケース では、本当に痛くても、そしてその痛みが体動困難なほど酷くても、自賠責保険における後遺障害の認定システム上は非該当の判断をせざるを得ません。このこ とを自賠責保険の調査事務所は明言しています。
このような場合は、もはや裁判所による認定に委ねる他ありません。

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