6月11日、『頭部外傷や病気による後遺症を持つ若者と家族の会』主催の「リハビリを考えるシンポジウム」に参加しました。
シンポは、今年の4月1日からリハビリ治療の診療報酬が改訂されたことに伴い、それが現在及び今後のリハビリ治療にいかなる影響を与えるかを検証するというものでした。
講師として、順に
- 厚生労働省・中央社会保険医療協議会委員の勝村久司氏
- 兵庫医科大学リハビリテーション医学教授の道免和久医師
- 山口クリニック院長の山口研一郎医師
が、それぞれ講演をされました。
勝村氏からは、医療改革実現の立場から、患者に対してレセプト(病院が社会保険庁に提出する診療報酬明細書)なみの明細書の発行を義務付けない限り、患者本位の医療は実現できないことが指摘され、道免医師からは、十分なリハビリテーション医療を実現するという立場から、今回の改訂が、急性期と回復期のリハビリ治療に対する保障を充実させたことは評価できるが、それ以降の維持期(症状固定以降の時期)のリハビリに対する保障を打ち切ることを原則としたのは、症状の悪化や生命危機に対して目を瞑ることを原則とするものであり不当との意見が表明され、山口医師からは、小規模個人病院における高次脳機能障害患者に対する十分なリハビリ治療の実現の見地から
- 高次脳機能障害患者の社会性欠如に対するリハビリ手段として20人〜30人規模のグループによる集団リハビリが有効であるが、今回の改訂により、1日に一人2単位(40分)として9人程度しか保険適用されなくなった
- またクリニックでリハビリを受けて復職出来た高次脳機能障害患者は30名弱であるが、そのほとんどが、発症から1年以上経過してから初めてリハビリを受け、かつそのリハビリ期間は半年〜1年以上を要したが、今回の改訂では、すべて保険適用されなくなった
ことがそれぞれ指摘されました。
以上の3氏のご指摘が、現実の交通事故裁判において被害者側から主張され裁判所に紹介されることはないのが通常です。社会保障制度の内容の是非は、本来 「立法」「行政」の問題であって「司法」の問題ではないことから裁判上の直接の争点にはなり得ないからです。
しかし、裁判所の「損害の控えめな認定」の高くて厚い壁を砕くには、交通事故の被害者が社会保障資源の不備から2重3重の被害を受け、途方に暮れている現実を主張立証することは絶対に必要だと考えています。
講師の道免医師が代表を務めておられる
特定非営利活動法人CRASEED(リハビリテーション医療推進機構)
で、『リハビリテーション医療の打ち切りに反対する署名活動』
が展開されています。
穂高も署名済です。関心のある方は、上記ホームページを参照され、是非ご署名下さい。