高次脳機能障害で泣き寝入りしないための10の鉄則:高次脳機能障害の一般的理解

高次脳機能障害の一般的理解

高次脳機能障害とは

高次脳機能(認知)とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と好意の感情(情動)を含めた精神(心理)機能の総称で、病気(脳血管障害など)や事故(脳外傷)によって脳が損傷されたため、認知機能に障害が起きた状態をいいます。

通常、脳血管障害より、外傷による高次脳機能障害の場合の方が治療が困難で予後が悪いとされています。それは脳血管障害の場合は出血を伴うことから画像で脳損傷の部位が推定しやすく、かつ損傷範囲も限局されていて、早期に診療の見通しが立てやすいからです。
これに対し、外傷による高次脳機能障害の場合は、びまん性(広汎性)軸索損傷の場合が大半であることから、脳の損傷部位が広範囲に及び、かつ画像で責任病巣を捉えることも出来ません。
よって予想もしない障害が顕現し治療も困難となる、というのが原因のようです。

なお、石川県リハビリテーションセンターの調査報告書によると、外傷性脳損傷の場合は脳血管障害に比べて、運動麻痺や 歩行障害は軽度であるが、記憶障害や計画的行動の遂行機能障害・社会適応障害が重度な傾向がありました。
また、ADLは自立している割合が高いにも関わらず、IADL(金銭管理・交通手段の利用・買い物・道順の理解等の手段的日常生活動作)で困難が生じています。さらに、外傷性脳損傷は社会的行動障害が重度であることが特徴的とされています。

主な症状

高次脳機能障害は多彩な症状が見られますが、その中でも、厚生労働省の「高次脳機能障害支援モデル事業」についての最終報告書(平成16年発表)では、対象者424名中、「記憶障害(90%)注意障害(82%)遂行機能障害(75%)」の順で発症頻度が高いと報告されており、下記のような症状を伴うことも少なくありません。

記憶障害
覚えられない・思い出せない・すぐに忘れる状態
注意障害
気が散りやすい・集中できない・あるいはずっとぼんやりしている状態
遂行機能障害
手順がバラバラで要領よく計画的に行動することが出来ない・複数の作業を同時にこなすことが出来ない状態
人格情動障害
すぐにキレる、病的猜疑心や固執性が高い状態
コミュニケーション障害
話しに脈絡がなく何が言いたいのか趣旨不明・会話が噛み合わない状態
感情易変
些細なことで気分が変わりやすい
その他
判断力の低下(特に危険に対する認知能力の低下)、病識欠如(自分が病気であることの自覚がない)、発動性・意欲の低下、協調性の欠如、易疲労、地詩的障害(よく知っているはずの道で迷う)、見当識障害(自分がどこにいるのか、今日が何の日か、親しい人なのにその人が誰なのかがわからない)、半側空間無視(片側を見落としやすい、見えない)、運動麻痺、失語症など。

症状固定時期

医学上、一律に受傷後半年ないし1年とする見解や、2年とする見解がありますが、過度の単純化の危険を犯しているものと思われます。
高次脳機能障害は、認知症と異なり、損傷から免れた健常な脳機能を利用をして認知リハビリ等を通じて、徐々にですが改善していくことが確認されており、特に若年層においては比較的顕著な改善傾向を示すことが指摘されています。
実際、高次脳機能障害の認知リハビリに取り組んでいる大規模医療機関においては、リハビリによる実際の改善成績から、高齢者では半年、青年や中年では1年から1年半、若年では2年とされているケースが多いようです。

前のページへ

~未だに見放され途方に暮れている高次脳機能障害者とその家族~

次のページへ

自賠責保険の後遺障害等級認定システムの概要

高次脳機能障害で泣き寝入りしないための10の鉄則
はじめに
~未だに見放され途方に暮れている高次脳機能障害者とその家~
高次脳機能障害の一般的理解
自賠責保険の後遺障害等級認定
システムの概要
自賠責保険で
適正な等級認定を受けるポイント
自賠責保険の等級基準及び
認定上の問題点
軽度外傷性脳損傷(M-TBI)に
よる高次脳機能障害1
軽度外傷性脳損傷(M-TBI)に
よる高次脳機能障害2