解決実績

膝の動揺関節について自賠責保険で12級相当とされた事例につき、裁判所で8級相当の後遺障害を認める画期的な判決を得ました(平成21年7月31日・神戸地方裁判所姫路支部)

膝の動揺関節 8級

加害者側主張金額 1597万9221円
UPした金額 4362万1070円
解決した金額 5960万0291円

UP率4

解決タイプ
神戸地方裁判所姫路支部
属性
会社員(36)
等級主な傷病
膝の動揺関節 8級
争点
労働能力喪失割合
カテゴリ
下肢

穂高に相談されるまでの経過

平成15年6月、当時36歳の会社員が交通事故で、左膝前十字靱帯損傷、左膝後十字靱帯損傷、左膝内側々副靱帯損傷等の受傷をしました。いわゆる複合靱帯損傷と呼ばれる重症でした。

 

平成17年2月に症状固定とされ、自賠責保険に対し後遺障害等級の認定を求めたところ、常時硬性装具を装着し、かつ杖歩行をしているというのに、膝痛として後遺障害等級12級の認定でした。
被害者は各所で法律相談されましたが、いずれも納得のゆくアドバイスが得られず、途方に暮れていたところ、ネットで穂高のことを知り来所されました。

 

穂高の検討と方針

検討

自賠責保険に提出された後遺障害診断書を見たところ、驚きました。後遺障害診断書には、自覚症状として「左膝関節の疼痛、歩行困難」他覚所見としては「下腿の筋萎縮、杖なしで15m以上の歩行は困難」としか記載されておらず、しかもレントゲンでストレス撮影もされていなかったのです。このような手抜の診断書では、自賠責保険から動揺関節の後遺障害の認定がされるはずがありません。

 

自賠責保険の膝の動揺性の認定方法は

そもそも自賠責保険の後遺障害の認定法則は

 

  1. 書面主義
  2. 他覚所見至上主義

 

です。

 

書面主義ですから、実際には膝に動揺性があったとしても診断書に記載がないとときは、動揺性は認定されません。
さらに、他覚所見至上主義ですから、診断書に膝の動揺性の記載があっても、それを裏付けるレントゲン・ストレス撮影画像がなければ、膝の動揺性の認定をしません。

 

異議申立て

そこで、穂高は、協力医にお願いし、症状をもれなく丁寧に記載した後遺障害診断書の作成とレントゲン・ストレス撮影をお願いし、自賠責保険に対し異議申立てをしました。

 

自賠責保険の認定方式と判断結果

自賠責保険は、膝の動揺性を認め10級の認定をしました。これは、硬性装具の常時装着は不要、軟性装具で足りるとの判断です。自賠責保険がこのような判断をした理由は、被害者の後遺障害の実態を根拠とするわけではなく、他覚所見至上主義の原則に基づき、あくまで、レントゲン写真上、関節間隙すなわち膝関節の開きの数値が、自賠責保険上の8級の程度に達していないことだけを根拠とするものです。

 

自賠責保険の認定方法の限界

以上のように、自賠責保険の後遺障害認定は、画像所見をほとんど唯一の決め手として膝の動揺性の程度を判断する制度ですが、そのような自賠責保険の後遺障害認定方法は根本的に無理がありますそもそも画像所見だけで動揺性の有無と程度を正確に判断することは不可能だからです。

 

回旋の不安定性の有無と程度などがその典型例なのですが、動揺性の有無や程度は画像所見では判然としません。画像所見では不安定性が否定されても、実際には不安定があることが多いのです。逆に、画像上、顕著な関節間隙が所見されても、硬性装具の装着までは必要がなく、実際にも装着していない例は決して少なくありません。

 

このように、画像所見は動揺性の有無と程度の判断の参考になり得ることはたしかですが、決め手にはなりません。整形外科における臨床医学上も、画像はあくまで補助診断の位置付けに止まっています。

 

正確な認定方法

動揺性の有無や程度について、正確に判断するには、実際に患者さんに対し徒手検査(ストレス検査)を実施し、その動揺性の程度を目視下で直接現認することが絶対に必要であり、かつ容易に判断出来ます。

 

この点、労災保険の認定システムは、労災の顧問医が、実際に、被害者と面談し、直接徒手ストレス検査をして膝の動揺性の程度を診るシステムになっています。ですから、動揺性の程度を正確に現認することが出来るようになっているのです。

 

※ 以上の詳細については、膝の靱帯損傷による動揺関節の被害者の方へを参照下さい。

 

自賠責保険の10級の認定を無視し、8級相当を求めて提訴

以上のように、自賠責保険の後遺障害等級の認定ルールとして、膝の動揺性の程度の判断はレントゲン写真で撮影されている膝関節の間隙の数値を決め手として決定するものと規定されている以上、自賠責保険に対しこれ以上の異議申立てしても8級相当の認定がされることはありません。

 

そこで、穂高は、8級相当の認定を求めるべく、裁判所に提訴しました。そして、裁判所に対し、

 

  1. 自賠責保険の認定方法には限界があること
  2. 動揺性の有無や程度について正確に判断するには、実際に患者さんに対し徒手検査(ストレス検査)を実施し、その動揺性の程度を目視下で直接現認することが絶対に必要であり、かつ容易に判断出来ること

 

を主張し立証しました。

ところが

 

  1. 自賠責保険の認定に追随する傾向の強いの裁判所の抵抗は思ったより激しい
  2. 膝の靱帯損傷については権威とされている某国立大学の医学部教授の「硬性装具までは必要なし」との医学的意見

 

もあって、8級相当の認定を受けるには困難を強いられました。

 

それでも、協力医の協力も得て 粘り強く多数の医学文献を提出したり、関節鏡下で被害者の前十字靱帯が完全断裂していたことなどを立証するなどして、8級相当の認定を得ることができました。

 

最後に

この被害者の方は、当初から悲惨を極めていました。事故後、地域の基幹病院である国立病院に救急搬送されたのですが、よほど当直医の当たりが悪かったのか、単なる膝の捻挫と診断され、入院を拒否され放置されていたのです。さすがに、事故の翌日には、違う医師によって前十字靱帯の損傷があることがわかりギブス固定の処置がされましたが、それでも後十字靱帯や内側々副靱帯の損傷は見落とされていました。

被害者が実は複合靱帯損傷の重症であったことが判明したのは、なんと、事故から半年経過してからでした。医師の力量に問題があったこともありますが、靱帯損傷が見えにくい傷害のひとつであったことも原因です。 泣き寝入りせず、適正な賠償金を得るためにも、膝の靱帯損傷による動揺関節の被害者の方へをご参考にされ、実践してください。